■ はじめに
3学期におこなった実践です。
昨年度まで子どもたちは紙版画を体験してきました。担任した昨年度は、できるだけ自分で取り組めるような実践をしました(→昨年度の実践)。今年度は、木版画を体験させようとしました。木版画は日本の伝統的な表現技法であると同時に、版木を彫刻刀でザクザクと彫っていく単純な気持ちよさを味わう(体験する)、表現への見通しを持たせる(計画性)、彫刻刀という刃物を使う練習…などの教育的な魅力をたくさん持っているのです。版で表わす題材の確保がだんだんと難しくなってきていますが、それでも年に1題材だけでもあるので、なくしてはいけない、子どもたちに年に1度だけでも体験させていきたいものと思っています。
そして、今年度も昨年度と同じように、ずっと家庭でも飾ってもらえるようにカレンダーになっている版画用紙に刷っていくことにしました。
■ 導入
まずシナベニヤ版に薄墨を塗ります。この頃ではすでに片面が薄い青などに塗られている版画板が市販されていますが、子どもたちに、薄墨を塗ることの意味を考えさせていきたかったからです。木版画は基本的には凸版なので、彫ったところが白く、彫らなかったところが黒くなります。彫る段階でも版画板に薄墨を塗っておくことで、彫ったところは白く、彫らなかったところは黒くすることで彫りやすくなります。
次に下絵を考えました。昨年度は「1年間の思い出」でしたが、今回はもっと自由に、1年間の思い出でも、自分の夢でも、こんなことできたらいいなでも何でもいいことにしました。ただし条件は「自分が本当に版画にしたい、カレンダーにして一年間飾っておきたいような版画を作る」ことです。
下絵は、薄い紙を使用しました。下絵が出来上がって転写をする段階で、薄い紙だと裏返しにしても下絵の線がわかりトレースすることができるようにするためです。
下絵はできるだけ簡略化させなくてはいけません。彫刻刀では普段鉛筆で書くような細かな線を表現することはできません。そのため、鉛筆の上の方を持ったり、グーで鉛筆を握って下絵を書くようにさせました(一応)。それでもついつい細かい線を描こうとするのですが、個別に、表現意図を残しながら線を簡略化させる方法を指導していきました。
薄墨が乾くと、下絵にカーボンを敷いて下絵を写していきます。墨を薄くしておくことは、カーボンの線が見えやすくするためでもあります。
版画板と裏返しにした下絵をテープで固定して、間にカーボンを挟み、トレースをしていきます。時折、線が映った版画板を確認して、ズレがないか、思ったとおりの線になっているかを確認しながら作業を進めていきます。
■ 彫り進み
まず、彫刻刀の種類と彫りの効果について大体を説明しました。それと同時に、再度版画作品を提示し、丸刀や平刀の彫り方・彫る向きによって、意図を効果的に表現することができることを知らせました。右側のスノーボードの作品は、平刀を使って、スキー場の雪面らしさを意識して表現できました。
彫り進みの段階では、担任が確認しながら子どもたちは作業を進めていきます。子どもたちは初めての版画なので、版画表現のおもしろさ、表現の広さを感じ取ってもらうことが第一義だと考えました。そのため、考えさせることは考えさせていかなくてはいけませんが、必要以上に失敗させないことが大切だと考えました。そのため、見通しを持たせられるような言葉かけをしながら、落ち着いて、よく見て、よく考えて、使うべき彫刻刀も吟味して彫り進めをしていくことを指導していきました。
下絵のところにも関連はするのですが、表現を進めて幾段階で大切になってくるのが、彫るところと彫らないところをどのように考えていくのかというところです。そのため、「彫ると白くなる」ということを理解させるために、版木を薄墨で塗っておくということが生きてきます。
ここでは、だんだんと子どもたちも見通しが持ててくるので、下絵を再度確認しながら、どこを彫って、どこを彫らなくすればいいのかを一人一人確認する作業もおこなっていきました。
この2つの指導をおこなうことで、子どもたちの戸惑いはぐんと減ったように思えます。
最後に、彫りカスがついていないか、彫り残しはないか確かめさせて、刷りの作業に映っていきます。
■ 刷り
昨年度、刷りを一度経験しているとはいえ、一年に一度では、なかなか習熟が図られているとはいえません。少しでも子どもたちが刷りに慣れていけるようにしていきたいと考えました。そこで刷りの練習で奉書紙に2枚、カレンダーを1枚の刷りを最低経験させようと考えました。それと少し多めに奉書紙を注文しておいたので、失敗した子、もう少し刷ってみたい子に対応できるようにしておきました。
子どもたちが刷りに集中する時期にもある程度対応できるように、しかし刷りを待つことで、刷っている友だちの様子を見ることもできるように、1つの場所に3箇所刷りの場所を設定しました。はじめのうちは教師が刷りの手伝いをすることができますが、だんだん増えてくると対応しきれません。また彫っている子どもたちへの対応もできなくなってしまいます。そのため、早くできた子どもたちに刷りの手伝いをさせるようにしました。ローラーを扱う時に手を汚しても、馬楝での刷りで作品を汚してしまうことも避けることができます。この時に、馬楝を頬にこすりつけると頬の脂分で滑りがよくなることを教えたりするtipsもちょこっと披露したりもしました(^^ゞ。
■ 観賞会
鑑賞の活動は、制作の過程でも折りに触れておこない、互いにどのような活動をおこなっているのか、どのような工夫があるのかを知らせあう活動を行ってきました。
そして制作も一段落した段階で、 最後に全員で観賞会を開きました。一人一人が表現の意図、工夫したところ、苦労したところ、できるようになったこと、そして家のどこに飾ろうとしているのかについて話をしました。みな晴れ晴れとした自慢気な表情で発表をし、聞く姿勢も「へぇ~」「うんうん」などと反応しながら友だちの発表を聞くことができました。
最後の感想を書くカードにも、それぞれの思いを詳しく書き、よい学習ができたと締めくくってくれました。
