【キーワード】共同幻想/きょうどうげんそう

 吉本隆明の概念。本能を失った人間は、現実感のない幻想の世界に棲んでいる。群居生のある人間は、他者と幻想を共有化し、”共同幻想”を持つことによって初めて、社会を構築し生きていくことができる。国家、経済、文化、または恋愛、信頼、虚偽、懐疑など、人間特有とされる現象全てが、共同幻想であるといえる。

 初めは、個々の私的な幻想の共通部分を見出しただけだったが、次第により多くの人間の中で共通する部分を共同幻想とし、社会という疑似現実の世界を作りあげてきた。権力者が人間を効率的に管理するためか、もしくは特定の地域に多くの人間が定住するために望み、かつ必要なことであったのかも知れない。

 共同幻想を合理的に発達させるために、人間は文字を発明し、近代に至っては教育とマスコミの力を利用し、人間は地球全体を支配するかのような巨大な幻想を構築した。また現代に至ってはこの共同幻想の中に仮想現実をも構築し、共同幻想の入れ子構造ともいえる状況をも作り出している。

 しかし、この共同幻想は絶対的かつ超越的な存在ではなく、トーマスの公理が「集団の構成員がある状況を真であると定義すれば、結果においてもその状況は真となる」というように、共同幻想は常に流動的で不安定な側面も持つ。

 また現在では、共同であるべきはずの幻想が高度に複雑化し、ブラックボックス化してきたため、私的な幻想と共同幻想が遊離し、人間は私的幻想、共同幻想のどちらでもなく、その間の歪みの中に生きているのかも知れない。

(参考:「共同幻想」、「三省堂コンサイス20世紀思想辞典」)

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