6年「学校紹介のコマーシャルをつくろう」

■ はじめに 

IMG_2047  本学級では、昨年度の総合的な学習の時間(以下総合学習)で情報教育をおこない、また図画工作科でデジタルカメラとコンピュータによるアニメーションの作成などを経験してきた。最高学年となった今年度、総合学習では「IZUMIZAKIエンサイクロペディアをつくろう!」というテーマで地域学習を進めてきた。小学校生活最後の学期を迎えた3時期、地域学習を発展的にとらえ、6年間学んできた学校のよさを再確認し、学校に対する愛着、そしてその学舎で育ってきた自分に自信を持つことができるよう「学校紹介のコマーシャルをつくろう」という単元を設定し取り組むこととした。
 本単元は、デジタルビデオカメラとコンピュータを活用した学校紹介をテーマとしたコマーシャル制作の活動である。総合的な学習の時間の活動とはいえ、学校に愛着を持つといった道徳的要素、ビデオカメラやデジタルカメラの操作といった情報教育の要素、光と被写体の関係・構図・配色・効果的なストーリーの展開といった図画工作科の要素も含まれる、まさに総合的な単元である。
 コンピュータの性能やデジタルビデオ編集が身近にできる環境が整ってきたとはいえ、学校に整備されているものの中でおこなっていくのには限界がある。子どもたちがどれだけ役割を分担し合って協力してつくり上げていくことができるか、用意できるビデオ機器等を勘案し、クラスを4つのグループに分け、2台のビデオカメラを使用して取り組んでいくこととした。さらにはビデオ機器の不足を補うためにデジタルカメラの動画撮影機能も利用することとした。

■ 活動の様子 
IMG_2049  まず教師から、「自分たちが胸を張って自慢できる学校のよさをPRしよう」「ほかの人たちがあこがれるような学校のPRをしよう」と提案し、活動の導入とした。ただ単なる学校紹介ではない「自分」というフィルターを通したよさの発見、そして自己満足には終わらせず他者を意識した制作にできるように意図したものである。
 子どもたちはまず、事前にワークシートに書き入れることで自分の思う学校のよさ、CM制作に対する思い各自が持って、グループごとにどのようなCMを作成していくかを話し合った。制作時間、機材台数の制約などから15~30秒程度のCMを作っていくことを決めた。すべてを盛りこむことはできないため、どのように自分たちの思いを取り込んでいくか話し合い、企画書に自分たちのCMの青写真を描いていった。さらにより具体的な構想を描きたいグループには、企画書のほかにアニメーション制作の時にも使用した絵コンテでより具体的なシーンを描きながら話し合いを進めていった。この中で子どもたちから、画面の中に画面と取り込むインポーズを入れたい、テロップを入れたい、ナレーションを映像に重ね合わせたいという欲求が出てきた。しかし子どもたちが使用する画像編集ソフトには、そのような機能がないため、教師が別の画像編集ソフトを使用することで、できる限り子どもたちのニーズに応えられるようにした。話し合いによってある程度具体的な活動内容が見えてくると、子どもたちは、監督、ディレクター、アナウンサー、カメラマンなど、テレビなどからの知識をもとに役割を決め、それぞれの役割に応じてアナウンス原稿を作成し読み合わせをしたり、ビデオ機器の操作の練習をしたりと準備を進めていった。
 撮影の段階となると、監督、ディレクターがビデオカメラのディスプレーを見ながら、思い通りのシーンが撮れるよう何度も取り直しをし、どのグループもあたかもテレビのNG大賞といった番組を思い出させるような緊張と笑い声の絶えない撮影を進めていった。
IMG_2076 コンピュータへのビデオデータの取り込みは、機器(IEEEボード)が少ないこと、難易度が高いことなどにより、教師がデジタルビデオカメラからコンピュータへ取り込み、校内ネットワークを介してファイルサーバに保存していった。子どもたちは、その取り込んだビデオデータを確認しながら、動画編集ソフトを使って、うまく撮れたファイルを自分たちの構想に沿って配置していく作業をおこなっていった。子どもたちはさらに、必要に応じて画像編集ソフトを利用してタイトル作成をしたり、さらに撮り直しをしたりしていった。
 各グループでコマーシャルが完成すると、鑑賞会を開催した。ワークシートを配布し、自分たちの思い、意図を発表しながら作品を鑑賞していった。

■ 本単元を実践して
  これまで図工や総合的な学習の時間など、子どもたちの表現(今回は特にビジュアルな表現に関して)を観てきて、子どもたちの表現力は本当についているのか、「生きる力」となって働いているか、と考えると、必ずしもそうではないのではないかという思いを持っていた。そこには、子どもたちの求めようとしている表現と学校教育でおこなわれている表現に溝があるように感じられるからである。
 子どもたちの日常の中には、アニメ、マンガ、テレビ、映画、テレビゲームなど、これまでの美術の枠の中には必ずしも入らない、魅力的で新しいアートの世界と身近に触れることができている。その一方で学校では、表現が授業の中で完結してしまい、子どもたちの日常生活から受ける表現と学校教育でおこなっている表現との間には大きな溝=格差があるように思えるのである。この日常生活と学校における表現の格差が、本来求めるべき表現力の育成がなかなか進まない一因なのではないかと考えるのである。
 そこで現在の学習指導要領の範囲内で、「生きる力」の育成を目指し、それと同時に今日的な表現の入門的な内容を体験させることを目的とし、先に挙げた表現の格差の克服を意識した授業が本単元である。また、本単元を通して、子どもたちにこれまでとはまた違った魅力あるビジュアルな表現の世界をかいま見せたいという思いがあった。
 活動の中で子どもたちは、これま身につけてきたITのスキルを生かしてグループの中で自分の思いを伝え合い、イメージをふくらませ、それぞれ役割を分担しながら学校紹介のコマーシャルをつくっていった。卒業を間近にしたこの時期の子どもたちは、自分たちの思いをどのようにコマーシャルに込めていくか、あれこれ苦労し、悩みながらも、それぞれのグループなりの思い入れ深い作品を作り上げることができた。これまで何気なく観ていたコマーシャルが自分たちの表現の参考になるということに気づき、ただコマーシャルを受動的に眺めるのではなく、コマーシャルのおもしろさ、おもしろくしている技法・アイディアを見取ることも自発的におこなうこともできた。短い時間の実践ではあったものの、子どもたちがより主体的に表現と関わっていく体験ができたように思われる。
 IT活用に関しても、これまでできるだけ、折に触れ興味関心を高める活動や習熟を図る活動を取り入れてきたつもりである。しかし現状では、小学校は2人で1台の配置であり(ソフトウェアも含めて)、交互に操作を交換するなど工夫をしているが、どうしてもマウスを握る子とそうでない子が自然と分かれてしまう。さらに家庭でのITの経験も含め、これまでのITに触れてきた経験の積み重ねの格差は小学校の段階においてもかなり大きいのが実態である。コンピュータは、魔法の箱ではない。子どもたちの抽象的な思考を支援する機能も持っている反面、抽象的な思考、抽象的な内容の理解を求める。そのため、ただ単に操作の習熟を図るだけでは、抽象的な思考が難しい子への対応にはなっていかない。普段の授業の中でも意識的に対応を図ろうとしてきてはいるが、本単元ではITの格差がもしかすると抽象的な思考を支えるというコンピュータの活用の目的が、逆に広げる結果となっているのかもしれないということを考えさせられる実践ともなった。この子どもの学習スタイルとコンピュータを使った学習方法のあり方の問題は、今後の実践の中でさらに研究を重ね、課題解決を図っていきたいと考えている。

※ 以下は、実践の途中経過をまとめたものです。

< 近況報告> 2004.1.16 実践「コマーシャルをつくろう」の途中経過

 3学期が始まり、動画による造形表現に取り組んでみようと思い、「コマーシャルをつくろう」という実戦を始めました。卒業を前にした子どもたちが、自分たちの学校紹介のコマーシャルをつくる・・・という実践です。
  これまでデジタルカメラの操作やデジタルカメラを使ってのパラパラアニメーションに取り組んできてはいましたが、本格的な動画表現は初めて。試行錯誤の連続です。教師側としては、学校にあるPCはWindows Meのため、マイクロソフトのムービーメイカーが入っているため、これでいけるか?と思っていたら、自分のもっているPC(Windows XP)のムービーメーカーと大違い(当たり前?)でフリーで子どもたちが簡単に使えるようなツール探しをいろいろしました。最後までムービーメーカーとさくさく動画へんしゅうのどちらにしようか迷いましたが、結局は取り込みはフリーソフトのArea61 DVキャプチャーというソフトを使ってDVからaviにして取り込み、それをムービーメーカーで編集・・・という形式を採ることにしましたm(_ _)m。子どもたちの最終目標=ホームページ掲載は、さらにwmvもしくはmpeg形式にエンコードをし直そうと思っています。
  子どもたちと話し合いながら授業をつくってはいますが、卒業を前にした・・・というところを強調して、自分たちが本当に自慢できる学校のよさってなんだろう?ということを考えさせ(悩ませ?)コマーシャルの制作を進めてきました。子どもたちは本当にいろんなアイディアを出してくれ、ニュース風にしたい、テロップを入れたい、BGMを入れたい、画面をインポーズして画面の中に入れたい・・・など、それってムービーメーカーでできっこないじゃん!というような分不相応な?企画を作っています。ある程度は担任がプレミアを使ってフォローしていこうと思っていますが、ぼく自身も動画は未知の世界・・・参考本を見ながらなんとか子どもたちのニーズに応えていきたいと思っています。
  それにしても、初めはなかなかうまく進んでいなかった話し合いも、だんだんと活動が進むにつれ、役割分担の中にアシスタントディレクターが出てきたり、カンペをつくったりと、さすがテレビっ子たち、本格的になってきました(^^ゞ。
  来週の金曜日は、教育センターの指導主事の先生をお招きして研究授業がおこなわれる予定です(^^ゞ。
  それにしても、気持ち的に、この実践は図工のアニメーションの発展表現・・・と位置づけたい気がするのですが、やはり無理・・・という指導もあり、総合学習の単元として扱うことになりました(ちょっと解せないところもあるけど・・・)。しかし、映像表現が今までは使用可能な機材がなかったかもしれませんが、現在では学校の中にあるものでかなりのことが制作可能となってきています。また動画は、子どもたちの生活の中に非常に浸透してきている表現でもあります。なのに、小学校では発達段階に縛られているのか、アニメーションをほんとうに小さく取り上げているだけで、題材の開発の余地がまだまだあると思われます。単にはやりのITということではなく、時間表現であること、受け手・消費者としてのコマーシャル視聴から、コマーシャル制作を通して、能動的な映像表現としてのコマーシャル鑑賞へとつなげる基礎作りの可能性も大きいと考えています。



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